川俣シルク草木染作品とオリジナル草木染作品「花野音」(はなのおと)
について

 

 福島県川俣町で生産されている「川俣シルク」に草木染めをし、福島で写生した桜を描いた作品をインスタレーションとして展示する活動を始めたのは、2012年から。2011.3.11.は、自分にとって自分が描いてきた「作品」というものがいかに命をつなげる媒体として、何の価値もない、ゴミに等しいものだということを自覚する出来事でした。それでも、そのことしか続けられず、描く事で社会的に何かできること。を模索しはじめてはじめました。 3.11をきっかけにそれまで遠い存在だった、父の故郷「福島」に春に行き、福島の桜を、福島の素材に描きたい。と思っていた時、2012年3月11日放映のTV番組で、ブライダル・デザイナーの桂由美さんが、ウェディング・ドレスを軽くして、花嫁さんの負担を軽くしたい。との想いから生まれた「世界一薄い・福島県産シルク」のことを知り、メーカーさんに問い合わせて、入手、制作しはじめました。その年の個展に最初の作品を展示、その後は「これは日本画じゃないから。」と、なかなか扱っていただけないため、提供いただける場所を探して、展示したり、日立の室内オーケストラのコンサート会場でコラボ展示させていただくようになりました。
今春は川俣シルクとも縁の深い、横浜市の「外交官の家」で、2回目の展示機会に恵まれました。平面絵画にとって「額装」は作品保護や展示の上でも大切な要素ですが、その素材の重みゆえに3.11のような大災害のときには、壁から落ちてきた場合、「凶器」となる可能性もないとはいえず、「インスタレーション」という展示形式は、災害に遭った土地にも持っていけるように。という思いから生まれました。「日本画」をインスタレーションとして展示すると同時に「日本画」の敷居を低く、より親しまれる存在にしたい。との想いで生まれたのが、シルク・オーガンジーを草木染した後、様々な植物や小動物、昆虫たちを描いて、ストールとしても、タペストリーなどとしても使えるように制作した作品が「花野音(はなのおと)」です。天然染料と岩絵具の併用は、平安時代の「源氏物語絵巻」には既に確認されている技法ですが、そのことを知ったのはずっと後になってからで、中学生の時、国語の教科書で出会った大岡信さんの文章「言葉と力」で、染色作家の志村ふくみ先生が桜の樹から煮出した染液で桜色を染めるということを知り、草木染めと日本画を同時に出来ないか。とずっと制作の中に取り入れてきました。作品を見ていただいた時の「草木の命を戴くのだから、それが表れていなければいけない。」との志村先生のお言葉が、ずっと頭から離れません。
草木の命を戴きながら、その上に自分の線や色を置いていく時、「はたして戴いた命をちゃんと描けているのだろうか?」と自問自答しながら制作しています。
平安時代頃はちょうど十二単の「かさね色目」の時代、おそらく当時は工芸、絵画などの境界線はなく、「画工」と呼ばれる人たちが自由に「美しいもの」を夢みてただひたすらに作って、描いていたのではないか。と勝手に想像しています。「アート」の役割は何かを考えた時「自分以外のだれかを幸せにすること」なのではないかと思います。自分の作品がまだ見ぬ「だれか」を幸せに出来るように、努力だけは続けていきたい。と思っています。


 

 日本の絹、和紙を草木染し、染色画材を使用しつつ、日本画の伝統的技法で制作しています。

それらの作品をそれぞれの展示環境に応じたインスタレーションとして展示することで、空間との共生、日本の伝統素材の美しさを再認識いただければ・・・と思います。また、オリジナル草木染作品「花野音(はなのおと)」は、「アートを身近に感じていただきたい」との想いから制作しています。どちらも3.11東日本大震災を機に生まれた作品です。模倣、類似作品の作成につきましては、ご遠慮いただければ幸いです。